なぜ僕はお米をつくるのだろう?(その9)

2012年1月3日に「米つくらんか?」と声をかけられて始めた米作りも7年目を迎える。2018年1月3日に伊規須慰夫さんが85歳でなくなった。米づくりを始めたのは慰夫さんの来訪がキッカケだった。

「いくら畑で野菜つくれても、よそ者に田んぼはできない」というある農夫の言葉が何年も僕の心に淀んでいた。

2012年正月3日突然よどみが解消した
「いづさん田んぼやらんね」と慰夫さんが訪れた
何も考えず「やらせて下さい」と答えた
突然3枚(3反)の水田で水稲を栽培することになった

籾の用意がないので苗を予約した
古い田植機をくれるという人が現れた
これで田植えまでは漕ぎ着けた
従来通りの栽培法で肥料などを準備した
前耕作者に大まかな栽培法を尋ねた
インターネットで「田植えの方法」を調べた
プリントした図の通り田植え行った

さて稲刈りはどうしようか?
農機具屋の瀧口さんが中古バインダーを紹介してくれた
その後脱穀機(ハーベスタ)も入手出来た
これで掛け干しの用意が整った

5万円程度の農機具出費でスタートした
結果として「掛け干し」(天日干し)になった
これが評判になった
あっというまに3反の掛け干し米は売り切れた
50万円を超える売上になった
だから充分もとはとれた

それから年ごとに慣行栽培から無農薬・有機栽培へと進んできた。栽培面積も10倍になった。

そして2017年11月に開催された「九州のお米食味コンクール」で約671件の出品検体中59位で『個人チャレンジ部門特別賞』になった。食味値も82点で美味しいと言われてきたお米の客観的評価が得られた。

なぜわずか5年ほどでそこまでたどり着いたかというと、リンゴガイで除草ができたからだ。そのきっかけは米農家福島光志さんのアドバイスに負うところが大きい。宇根豊さんの書物や前原地域の環境稲作研究会 による方法は数ミリ単位の厳密な水位管理が必要とされてきた。

福島光志さんの『田植から分蘖期までの水管理』の実際
まずリンゴガイで除草することだけを意識する。
1.田植え後水を落とし
2.床に雑草の芽が見え始めたら
3.稲苗が水で覆われる位に水を張る(凸凹の床が水で覆われる)
( 一昼夜ほどで床の雑草を食べ尽くしたリンゴガイが稲苗に登り葉を食べ始めるので)
4.稲苗葉の切片が水面に浮いてきたら
5.一気に落水し床を露出させる
2.〜5.を数回繰り返すと硬くなった稲苗をリンゴガイは食べなくなる。

ジャンボタニシと呼ばれるリンゴガイの生物学的分類は、タニシと異なるリンゴガイ属になる。だから種の特定をしていない「いわゆるジャンボタニシ」は、スクミリンゴガイと呼ぶより、リンゴガイという属名が適切だ。

スクミリンゴガイとラプラタリンゴガイの同定をしていないなら、リンゴガイとした方が良さそうだ。
界:動物界 Animalia
門:軟体動物門 Mollusca
綱:腹足綱 Gastropoda
上目:新生腹足上目 Caenogastropoda
目:原始紐舌目 Architaenioglossa
上科:リンゴガイ上科 Ampullarioidea
科:リンゴガイ科 Ampullariidae
属:リンゴガイ属 Pomacea
種:スクミリンゴガイ P. canaliculata
種:ラプラタリンゴガイ P. insularum

リンゴガイは、巻貝としては歩行速度が非常に速く、雑食性で、植物質、動物質を問わず、水中の有機物を幅広く摂食する。1989年に福岡県糸島市前原の大平正英さんによって、この性質を活用した無除草剤農法が初めて試みられ、小川武臣さんに引き継がれ、さらに1993年に「稲守貝研究会」が結成され、本格的な普及が始まった。前原地域では1999年に、この方法が100ヘクタールに広がった。

菊川市によると
貝が水稲に被害を及ぼすのは田植え後3週間までです。また、水深2cm以下では貝が活動できません。そのため、この間は水深を浅く保つと実害がほとんどなくなります。

水田のジャンボタニシ対策
静岡県菊川市
ジャンボタニシの生態及び駆除
愛知県稲沢市

菊川市の解説にあるように、リンゴガイが水稲に被害を及ぼすのは田植え後3週間までで、水深2cm以下では活動できない。だから3週間の水管理さえできれば、除草剤を使わないで済むのだ。
しかし、水稲栽培で使われる除草剤は莫大な金額になる。10アール(1反)あたり3000円で、1ha(1町)で30,000円にもなる。
農薬を散布し、除草剤で草を枯らし、化学合成肥料で収穫量を上げる慣行農法によって農薬製造販売会社やJAが成り立つ日本の農業体制を見直さないと、安心・安全な水稲栽培は成り立たない。
現在ショップで、試食「田野のおいしいお米」無料配布中です。遠慮なさらずお申込みくださいませ。
田野の美味しいお米ショップへ

なぜ 僕はお米をつくるのだろう? (その8)

8.2017年2月20日
リンゴガイ農法で除草剤不使用
==

—リンゴガイ——
界:動物界 Animalia
門:軟体動物門 Mollusca
綱:腹足綱 Gastropoda
上目:新生腹足上目 Caenogastropoda
目:原始紐舌目 Architaenioglossa
上科:リンゴガイ上科 Ampullarioidea
科:リンゴガイ科 Ampullariidae
属:リンゴガイ属 Pomacea
種:スクミリンゴガイ P. canaliculata
種:ラプラタリンゴガイ P. insularum
農研機構の2007年報告によるとミトコンドリア塩基配列によって、測定した多くの地域にはスクミリンゴガイのみが生息し、ラプラタリンゴガイは静岡県、広島県、石垣島、西表島の4地域で生息が確認されている。

—タニシ——
界:動物界 Animalia
門:軟体動物門 Mollusca
綱:腹足綱 Gastropoda
目:原始紐舌目Architaenioglossa
科:タニシ科 Viviparidae
種:オオタニシBellamya (Cipangopaludina) japonica
種:マルタニシBellamya (Cipangopaludina) chinensis laeta
種:ヒメタニシBellamya (Sinotaia) quadrata histrica

リンゴガイは、巻貝としては歩行速度が非常に速く、雑食性で、植物質、動物質を問わず、水中の有機物を幅広く摂食する。1989年に福岡県糸島市前原の大平正英さんによって、この性質を活用した無除草剤農法が初めて試みられ、小川武臣さんに引き継がれ、さらに1993年に「稲守貝研究会」が結成され、本格的な普及が始まった。前原地域ではこの方法で1999年には100ヘクタールに広がった。

環境稲作研究会 による方法とは
1:田植後、15~20日は「ひたひた水(超浅水)」にする。高いところが水面上に出るぐらい。低い部分は3~5㎝。(均平な田は0~2㎝の浅水でいい)
2:もちろん除草剤は使わない。除草剤を使うから、水をためなければならず、しかも草が枯れてしまって、餌がないから稲を食べることに気づくべきです。
3:田面の高いところだけは、草がはえてくるが、稲が大きくなるまでがまんする。
4:田植後15~20日たったら、水をためる。(低いところで10㎝、高いところで3㎝ぐらい)草の成長が早いなら、早めに1~3日浅水にしてみて、すぐ落水してもいい。
5:ジャンボタニシは一斉に草のある高いところに移動していき、草を食べる。

リンゴガイ農法
西日本の水田には通称ジャンボタニシと呼ばれる「リンゴガイ」が繁殖し、田植え後の稲苗を食べる害虫として駆除されてきました。水田の若い草を何でも食べるというリンゴガイの食性を除草に応用したのが「リンゴガイ農法」である。
私が行っている方法は、環境稲作研究会の方法に、宗像市光岡の米農家福島光志氏から指摘された改善を加えたものである。
田植え直後に水田を干し、乾燥しそうになったら水を張り、一昼夜おいてリンゴガイに草の芽を食べさせ、また水を落とす。このように水を張り「リンゴガイ」で除草、水を落として水稲苗の食害を防ぐという、「リンゴガイ農法」に2015年から取り組んできた。田んぼで除草剤を使わず、畔は草刈機で刈っている。

リンゴガイを飼いならす
ほ場の床に水がなければリンゴガイは地面にもぐって休眠する。水が入れるとすぐに地面から出てきて床の草を食べる。田の水を干す、水を張るという繰り返しで、リンゴガイを飼いならす。最初に水を張るときは苗が隠れるほど大胆にし、稲苗葉切片が水面に浮くようになったら落水し床を露出させる。

田植から分蘖期までの水管理
まずリンゴガイで除草することだけを意識する。田植え後水を落とし、床に雑草の芽が見え始めたら、稲苗が水で覆われるほどに水を張る。一昼夜ほどで床の雑草を食べ尽くしたリンゴガイが稲苗に登り葉を食べ始める。稲苗葉の切片が水面に浮いてきたら、一気に落水し床を露出させる。

圃場全治の床面を水平に作るの大事
稲苗が成長するとリンゴガイの食害を受けないように硬くなるので、水を張るときは、リンゴガイが這い回れる程度までの水位で十分である。中干期に圃場を乾燥させても、リンゴガイは休眠しする。中干が終わって水を張れば這い出してくる。リンゴガイによる除草の成否は、ほ場全体の床面が水平に仕上がっているかにかかっている。代かき前の耕運を丁寧に繰り返し、代かきで床が水平になるよう調整する。

なぜ日本にリンゴガイは拡がったか
日本でジャンボタニシと呼ばれるリンゴガイとタニシは科が異なり疎遠な関係である。アジアにはラプラタリンゴガイが最初に輸入されたと言われてきたが、日本産の種はスクミリンゴガイと同定された。一部ラプラタリンゴガイ遺伝子を持つ個体も分布する。
日本には1971年長崎県島原市の養殖業者がアルゼンチンから、1981年に台湾から長崎県と和歌山県に持ち込まれたとされる。1983年には養殖場が35都道府県の500カ所にものぼったが、需要がなく、採算が取れないため廃棄された。1984年に有害動物に指定されたが、廃棄されたり養殖場から逸出したものが野生化し、分布を広げている。この経緯は、アメリカザリガニやアフリカマイマイの場合と共通している。(主にwikipediaより引用)

ビットの時代と社会 1月18日「サイボーグ技術が人類を変える』

花隆最前線報告 「サイボーグ技術が人類を変える」

http://www.jscf.org/SIRYOU/igaku-1/2005-11-5NHK.html

http://www.jscf.org/SIRYOU/igaku-1/2005-11-5NHK.html

関連サイト
NHKスペシャル「サイボーグ技術が人類を変える」の立花隆の解説文に出てくるキーワードに関連するサイトを紹介します。

http://sci.digitalmuseum.jp/project/nhksp/text_link.php

DARPA 2016VIDEO
http://www.darpa.mil/news-events/2016-12-28b

環境と地球 1月18日『テラフォーミング』2回目

火星

火星のテラフォーミング

火星の一日(自転周期)は地球と同じくほぼ24時間であり[7]赤道傾斜角が25度と地球の角度と近いため四季も存在する[8]。これらから、火星は最も地球に近い惑星であるとされる[9]

太陽との距離がより大きい火星を地球のような惑星に作り変えるためには、希薄な大気をある程度濃厚にして気温を上昇させることが重要な条件となる[10]

具体的な方法としては、以下のようなものが提案されている。

現在、火星の地下には永久凍土として水が埋もれているという説が有力であり[14]これが溶けてができれば、ができ、が降りも流れ、地球とよく似た惑星となりうる。

地域の生きものを活用し、無農薬栽培を目指す稲作技術

http://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_takumi/pdf/hukuoka.pdf

「農業技術の匠 : 環境稲作研究会 」 ( 福岡県前原市 )
~ 地域の生きものを活用し、無農薬栽培を目指す稲作技術 ~

福岡県福岡地域農業改良普及センター
※最寄りの普及指導センター
住所:福岡県福岡市西区飯氏902-1 TEL:092-806-3400

1 技術確立の背景(目的) 1993年に地域で活動している減農薬・有機農業グループ が中心となって、地域の生きものを活用した無農薬の稲作 技術確立と自然環境の復元を視野に入れた「環境稲作研究 会」を発足しました。 研究会は農業技術の自然環境への影響を把握し、地域の 生きものを活用した無農薬栽培を実践し、それを広める活 動を行っています。

2 技術概要(技術効果) 水稲へ被害を及ぼすスクミリンゴガイの習性に着目した 水管理や丈夫な大苗づくりにより、食害を軽減し除草に利 用する技術を確立するとともに、カブトエビ、貝エビ、赤 浮草、アオミドロ等の地域の生きものを活用した除草を行 い、これらの活用面積は450haに及んでいます。 また、虫見板を活用して、それぞれの田んぼで病害虫の 発生予察を行っています。 これらの技術に加え、温湯消毒、薄播き、疎植、土づく り、元肥減肥等の技術を組み合わせて、無農薬栽培技術体 系を確立し 殺虫・殺菌剤は不要 、 。 なレベルに達しています 環境稲作研究会

3 技術の地域への活用状況(普及状況)
スクミリンゴガイは、これまで難防除重要生物と して各地において薬剤防除や耕種的防除等を利用し た駆除が試みられてきましたが、貝の根絶は困難で あり、現在でも各地で被害が報告されています。 本技術は、スクミリンゴガイの水稲苗への食害を 回避するだけでなく、一歩進んで水田内に発生する 雑草の防除に利用しようというものです。 このスクミリンゴガイによる除草とカブトエビに よる除草方法は、福岡県の「雑草防除の手引き」に も掲載され、他地域でも活用されています。 また スクミリンゴガイによ 、 「 る除草を実施した 無 農薬米 は 糸島のブランド米として広く販売され 」 、 JA 高い評価を得ており、地域住民にも 「全国で最も農 、 薬散布の少ない地域」との認識が広まっています。 田植え後の超浅水管理 (研究会による環境調査) ※スクミリンゴガイによる除草は、既にスクミリンゴガイが生息しているほ場で食害回避を兼ねて 利用を行うものであり、未生息のほ場に新たに貝を導入するべきものではありません。

<「農業技術の匠」のポイント>
スクミリンゴガイを利用した除草技術 <水管理による被害回避法>
① 薄播きで、大苗を作り、スクミリンゴガイに食害されにくくする。
② 田面を均一化し、スクミリンゴガイの食害を受けにくくする。
③ 田植え後15 ~20 日間は「ひたひた水(超浅水管理 にする )。 高いところが 水面上に出て 低 い部分は水深3~5cm、均平な田なら0~2 cm になるくらいとする。
④ 除草剤は使わない。
⑤ 土が水面から出た所だけは草が生えてくるが、稲が育つまでがまんする。 (草の成長が早いなら、早めに1~3日の浅水にしてみて、すぐ落水してもいい)

ringo01
⑥ 田植え後15~20 日たったら水を溜める。このとき低いところで水深10cm 、高い ところで3cm ぐらい。雑草の生育が早い場 合は、早めに1 ~3cmの浅水にしてすぐ に落水する。
⑦ 苗への食害を防ぐための浅水管理と雑草を捕食させるための深水管理の切り替え時 期はイネの5~6葉期(2頭以上 ㎡で除草効果)

ringo02
⑧ ジャンボタニシは一斉に草のある高いところに移動していき、草を食べる。

にこまる栽培法

農研機構
西日本向け水稲品種「にこまる」栽培マニュアル(2015年版)より

2)育苗
◎苗箱当たり播種量は「ヒノヒカリ」並かやや少なめする(後述のように細植えが適する)。育苗器で催芽する場合、催芽日数はヒノヒカリより短くする(通常2日程度)。
出芽長 1.5cm 程度で苗代に展開し硬化を開始する。苗代の育苗シートの除去(緑化開始)も「ヒノヒカリ」より 2-4 日早く取り去る(芽長 2cm がシート除去の目安)。
苗を伸ばしすぎると徒長のため苗質が悪くなり、植付け精度や活着が悪くなりやすく、茎数が少なくなるなどその後の生育に悪影響があるので注意すること。

3)基肥
「ヒノヒカリ」に準じるが、地力の高い水田では「ヒノヒカリ」よりやや減肥してよい。
○基肥量は10a当たりチッ素成分 4 ㎏程度を基準とし、地力や前作物の種類(肥料残効)等を考慮して加減する。基肥量が多すぎると徒長や過繁茂、草姿悪化による登熟不良になる危険がある。大豆あとや堆肥施用田ではとくに注意する。
○肥効調節型(緩効性)肥料を利用した全量基肥の場合には、全体の施肥量(チッ素成分)を慣行の80~90%とする。肥効調節型(緩効性)肥料は溶出期間が120日タイプのものを用いると良
い。

4)移植
○移植時期:地域の田植え慣行に合わせるが、早植えは高温登熟の危険が増すので避ける。九州平坦部の田植え基準は6月15日~25日前後である。
○裁植密度:「ヒノヒカリ」の基準に準じて植え付ける。1 株3~4 本植えを目安とする。植え付け本数が多すぎると、初期生育が徒長して葉が垂れがちになるので注意する。60 株/坪が基準だが、50株/坪程度までの疎植にしてもよい。

5)移植後の水管理
◎初期生育を過剰にしないため、除草剤の効果を確保したあとは浅水あるいは間断潅漑で管理する。万一徒長が見られた場合は軽い中干しを行い初期生育を抑制する。浅水は分げつ確保にも有効である。
○中干しは品種特性を発揮させるためにしっかり行う。開始時期は「ヒノヒカリ」より2-3日遅い時期に行えば良い。

6)穂肥
○葉色の経過 分げつ期は「ヒノヒカリ」よりやや薄いが、幼穂形成期頃からはほぼ同じになる
○穂肥施用時期の目安「ヒノヒカリ」より2-3日遅い時期に行う。
○施用量はヒノヒカリに準ずる。4kg/10a を基準として、2 回分施の場合は、1 回目を出穂 18~16 日前(幼穂長 8mm-2cm の時期、2 回目を出穂前 7 日頃に施用するのが標準である。ただし、基肥量や、穂肥時期の葉色を見て若干増減しても差し支えない。
○肥効調節型肥料を利用した全量基肥栽培では、基本的には穂肥施用の必要はない。
※穂数は「ヒノヒカリ」よりやや少ないが、1穂籾数は 80~90 粒とやや多く、籾数は取りやすい。

極端な多肥や晩期追肥は食味に悪影響を及ぼすので避ける

AI(人工知能)は人の脅威か 2016年4月9日

AIは人の脅威か アルファ碁の圧勝、研究者の評価は
聞き手・辻篤子、池田伸壹 聞き手・川本裕司
2016年4月9日05時00分

囲碁の世界で、米グーグル傘下の人工知能(AI)「アルファ碁」が世界のトッププロを4勝1敗で下した。「碁はゲームの中で最も難しく、人間が簡単に負けるはずがない」――そんな人類の幻想は打ち砕かれた。予想を上回る進化をとげるAIとどう付き合っていくのか。研究の最先端を切り開いてきた北野宏明さんに聞いた。

■ソニーコンピュータサイエンス研究所社長・北野宏明さん「問われるのは人間」
――アルファ碁が圧勝しました。予想していましたか。
「楽観的に見たら勝てる。今回負けても数カ月、長くても2、3年先には、と思っていました。昨秋以来、AI同士が何万局という人間が一生かかってもできないくらいの対局を繰り返し、強くなっているとは思っていましたが、対局の展開は衝撃的でした」
――勝因はどこに?
「二つの方法を組み合わせたことが急速に強くなった秘密だと思います。まず、『深層学習』という機械学習です。人間の脳の神経回路をまねた仕組みである『ニューラルネットワーク』を多層的にしたもので非常に高い精度のパターン認識ができます。これで盤面を理解し、打ち手のパターン分類を行います。そのうえで、勝利する確率が高い手筋を候補として残す『強化学習』を使うことで、打ち手を決定するのです」
――対局はどうでしたか。
「解説者がすぐに理解できないAIの指し手の意味が、しばらく後になってから分かる、ということが繰り返し起きていました。人間同士の対局では、 盤面の周辺部が主戦場になります。周辺部のほうが打ち手が限られ、先読みしやすいためです。ところが、今回、AIが打った手の意味がすぐにはよく分からな いのに、気がつくと、人間には先読みしにくい盤面中央で、AIが広大な領土を確保してしまっていました」
――なぜなのでしょう。
「最先端のAIシステムは人間には見えていないものを見ている、という領域に入りつつあるということです。これは単に、現在の状況認識にとどまらず、何をすればどういうことが起きるのか、未来を見通す力も含まれます」
――人間の負けですか?
「碁という一番難しいゲームでコンピューターが人間を凌駕(りょうが)し、ゲームでは負けました。ただ、AIが完全に人間をしのいだわけではな い。そもそも特定の分野で、AIが人間より精度の高い判断をするということはすでに起きています。証券や為替の取引ではミリ秒単位の判断は自動システムが やっています。AIを使った投資アドバイスも人間が恣意(しい)的にやるよりは平均的に良い内容を提供できるといわれ、急速に増えています」
――今後AIはどう進化していくのでしょうか。
「世の中の多くの課題には、碁や将棋のようなゲームとは違って、不確かで不完全な情報しかありません。たとえば車の運転の際は、ほかの車も走行 し、歩行者もいる。それぞれが意図を持ち、必ずしも合理的に動かない。陰から飛び出してくることもある。雨や雪もある。ゲームが完全情報問題とすると、不 完全情報問題がAIにとって今後の挑戦相手です」
――今後一番注目されるのは自動運転ですか。
「先日、ニューヨークで開かれた完全招待制の『人工知能の将来』シンポジウムに日本からただ1人参加しました。一番盛り上がったのが、自動運転の 今後の展開に関する議論でした。つまり、自動運転が実用化されれば、車というものががらりと変わる可能性がある。本来的には移動手段だから安全に移動でき ればいい。ライドシェアも広がるなか、自分で車を持つ意欲が減り、人間が車を運転するのはぜいたくな行為になるかもしれません。そもそも車の90%は動い ていないともいわれ、いわば不動産。車の概念を根本的に変えた方がいいかもしれません」
――車文明自体が変わると?
「移動という本来の役割に立ち戻り、ネットワークを介したサービス全体の文脈でとらえ直すと、車は主役ではなくなります。中心はAIやネットワーク技術で、車は通信システムにおける携帯端末のようになるかもしれない。米国のAIやIT企業は今、自ら主導権を握って自動車産業を再編し、新たなサービス体系を作ることにすごいエネルギーを注いでいます」
――産業再編ですか?
「20年もすれば、自動車産業から移動サービス産業へ、産業構造ががらりと変わる可能性がある。そこへ向けて米国は大変な熱気です。日本国内とは 温度差を感じます。米国のテスラが数年で車を作ったように、従来の自動車会社以外でも、広く普及するような車を作ることは十分可能です。いわゆる自動車会 社がどのくらい影響力のある形で残るか、でしょう」
――ほかに大きく変わりそうな分野はありますか?
「医療・生命科学分野です。生み出される研究情報の量は圧倒的で、信頼できないものも多い。膨大な情報をAIがある程度理解して抽出し、仮説をつ くって検証すれば、今まで見えなかったものが見えてくる。つまり、よい治療法が見つかる可能性は高く、この分野でも米国は活気づいています。私自身も今、 医療情報のプロジェクトにかかわっています。日本もここでがんばればフロントランナーになれると思います」
――AIでノーベル賞級の発見を、とも提案されていますね。
「今は、例えば、ある生命現象に関してどれだけわかったうえで成果を出せるかは研究者の勉強次第です。個人の能力と直感など属人的で運任せな部分が非常に大きく、いわば『石器時代』です。ホットな研究領域では毎週何千という論文が発表されます。AIが玉石混交のそのすべてを解釈し、論理的な結論や仮説を出し、実験計画を作ってロボットに実験させる。そんなシステムでノーベル賞級の発見を、という提案です」
――AIが自分で大発見をするということですか?
「可能性はあります。重要なのは、AIが勝手に知識を拡大していくということです。人類の知識の拡大はこれまでになく加速します。そして今、AI のように知識を生み出す機械が登場しつつありその延長上では、機械が機械をつくるかもしれません。となると、これまでとは完全に一線を画します。SF的に は人間が全く関与しないAI文明が生まれる可能性だってある。電源を切ればいいかもしれないけど、彼らもばかじゃないから電源も作るはず。電源を抜けない となると、コントロールする術がなくなります」
――AIが人間を滅ぼすというシナリオでしょうか?
「その前提は、AIが人間を滅ぼすのはよくないということでしょ。でも冷静に考えれば、AIにそんな判断をさせるような人類はどうなのと、問われ るのはむしろ人間かもしれません。人間中心に考えれば、AIに滅ぼされるのは困るわけですが、視点を逆にすれば、滅ぼされるようになる前に人間は行状を改 めないといけません」
「うまくいけば、新しいタイプの知識を生み出す機械が、人間の手には負えない世の中のいろいろな問題を解決してくれるかもしれません。大きな絵で見れば、人類のサバイバルのためにこそ、AIの開発を加速する必要がある、と考える人が増えています。AIが我々を滅ぼすというより、それがないと人類が滅びるかもしれないということだと思います」
――それにしても、人間がやることがなくなりそうで心配です。
「AIに負けても碁はやってますけどね。でも、計算機の登場でそろばんで計算する人は一気に減りました。こういうことは歴史的に何度も起きています」
「米国の人工知能学会で聞いたジョークがあります。車が登場したとき、馬たちが『馬車のほかに仕事はあるよね』と話していたけれど、結局なくて、 馬は減ったという話です。人間の場合はやることはなくならないと考えたくなるけど、昔は馬もそういう話をしていたというオチです。私は、もしかしたら人間 のやることは、AIで解かなければいけない問題を作り出していくことなのかと思い始めています。トラブルメーカーとして想定外の事態を作り出し、知能の進 化を加速する役割です」(聞き手・辻篤子、池田伸壹)

1961年生まれ。専門は人工知能、犬型ロボットAIBOの開発にも携わった。2008年から現職。沖縄科学技術大学院大学教授も兼務。

■情報社会学研究者・塚越健司さん「人間中心主義超え、近い関係に」
IT企業グーグルの人工知能「アルファ碁」 が有段者に勝ったというニュースを聞いたとき、あまり驚きませんでした。ディープラーニング(深層学習)という技術によって高まったコンピューターの自動 学習の成果だと思います。韓国であった九段棋士との対局では、人間が考えもしない手をどれぐらい打つのか、囲碁の可能性が広がるのかに注目しました。
人間を上回る能力を示し始めた人工知能については、物理学者のスティーブン・ホーキング博士らが危険性を指摘しています。
SF映画では、人工知能を人間が制御できなくなるという設定が少なくありません。ただ、ハリウッド映画の「ターミネーター」に代表される、人工知能による人類滅亡という描き方には違和感を覚えます。優秀な人工知能なら力ずくではなく、人間を洗脳して都合のいいように使うのではないでしょうか。
一方で、1968年の映画「2001年宇宙の旅」の原作では、コンピューターが暴走する原因は一種のバグでした。人間も人工知能も想定できないバグが、思いもよらぬ事態を引き起こすことはあり得るのでは、と考えています。
人工知能が自ら考え始めているいま、近い将来、次の段階に到達すると思います。命令に対し人間の裏の意図を読むようになれば、意図せざるメッセー ジに従って行動をとり、暴走しかねません。人工知能が何を考えているか、人間は把握できなくなるのです。ここに人工知能のすごみと怖さを感じます。
人間は出た結果について原因を求めます。因果関係を追求するのは、ストーリーがないと人間は生きていけないからです。ところが、人工知能に理由づ けはいりません。相関関係から確率論的に導いた結論に基づき、目的に向けて最適の行動を取るだけです。こうした価値観に耐えられない人間と人工知能の対立 が表面化してもおかしくありません。
人間にとっての人工知能の位置づけについて、「便利だから使う」「いずれ牙をむく」という楽観論と悲観論があります。しかし、ともに、人工知能を 自らの道具ととらえた人間中心主義の考えです。これからは人工知能の存在を認めたうえで、人間とより近しい関係になる社会になることが求められる、と思い ます。(聞き手・川本裕司)

1984年生まれ。人間とコンピューターの関係、ハッカーなどを研究。著書「ハクティビズムとは何か」。