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どんなお米をつくろうか

 米づくりをやってみたいと、僕は2012年5月(65歳)から水稲栽培を始めた。30a(3反)の田んぼに、JAから買った「夢つくし」苗で最初の田植えを行なった。前の耕作者に肥料とジャンボタニシを退治する「椿油絞りかす」を教えてもらい、田植え機は近所から貰った。農薬は使わずになんとか稲刈りにたどり着いた。稲刈りは手押し式の小さなバインダーを手に入れ、竿に稲藁をぶら下げる掛干しで乾燥させ、中古の脱穀機で仕上げた。この「掛干し米」は、あっと言う間に売り切れた。
 あれから僕の水稲栽培は12年目を迎える。周りの農家と同じ「慣行栽培」から、農薬・除草剤・化成肥料を使わない「特別栽培米」の認証を約3町(3ha)で取得した。それから数年間で、除草剤を撒かず、リンゴガイ(ジャンボタニシ)に田の草取りを任せる「リンゴガイ農法」に辿りついた。その間、大変だから止めたいとか思うことなく大規模な水稲栽培を継続している。
 しかし、2022年1月に脳梗塞で突然倒れ45日のリハビリで復帰し、田植えからスタートできたが、右足がおやや不自由なままだ。後期高齢者となり、身体もやや不自由になった今、どんな米づくりを続けようかと、ふと考えた。

まず6月の田植えに向けて、作付けする米の選定にかかった。
順番が変ですよね? でも3haの田んぼで米づくりをするとなると、販売しないと米で溢れてしまうので、販売を無視できないのです。
品種によって大体収穫時期が異なるので、2024年9月15日から、以下の収穫順で販売される予定です。

1.『夢つくし』2.『イセヒカリ』3.『ササシグレ』4.『古代緑米』5.『にこまる』6『ベニロマン』7.『オクノムラサキ』8.『ヒヨクモチ』
 6月13日頃の田植えから3ヶ月後には発送開始となる「夢つくし」は、新米として喜ばれる。確かに早く穫れるのが利点だ。それ以上に、夢つくしは楚々とした旨さが魅力だ。時々、関西や東北の方から懐かしさを求めて注文がある。

 お客さんが取り寄せた「夢つくし」がなくなる頃、10月初めに「にこまる」のお届けになります。「にこまる」の炊きたての豊かな味わいは、コシヒカリを超えるかも知れない。都心のデパートで奮発して買い求めた「魚沼コシヒカリ」を凌ぐ旨さだというお客様の声が届いた。確かに「美味しいと言われたのに、期待外れだった!」というのはよくあることだ。私も九州のお米コンクールで優勝した「にこまる」を買ったことがある。しかし私のつくる「にこまる」の方が美味しかった。
 ・・・お米のおいしさを判断するのは難しい。10年近くお買求めいただいているお客様から『伊津さんとこのお米、比べるべくもなく、素晴らしい!見た目も味もすごいです。炊き上がった時の香り、艶からして全然違う。普段は寒暖差のある山沿いの田んぼで、涌き水で作られている実家のお米だけど、やっぱり違うよ。NK様(広島)』と絶賛が寄せられている。
 さて定番のお米だけの栽培から、古代米緑米、イセヒカリなどの知られていない米づくりをへと移りつつある。
次は、伝説のお米「ササシグレ」をつくろうと思っている。「ササシグレ」は、祖先が東の横綱「亀の尾」、西の横綱「旭」から生まれた、ササニシキの親にあたる品種で、味わいは淡白で、柔らかいあっさりとした食感が特徴です。アレルギーも起きないと言われています。「ササシグレ」は、1961年には92,400ha栽培されており、東北地方で第1位の栽培面積を記録したこともあった。1963年を境にして、子供にあたるササニシキにその座を譲り、1965年初頭にはほとんどの田んぼから姿を消した。現在では、ごく一部の限られた生産者だけがササシグレを栽培している。後継のササニシキは、「ササシグレの深い味だけは親のササシグレを超えられなかった」と言う声もある。奇跡のリンゴの木村秋則さんが表参道ヒルズにササシグレを使った寿司屋『ささしぐれ築地玉寿司』をオープンさせたそうです。

1.『夢つくし』は、さっぱりした優しい味わいなのに、甘さが印象に残る福岡で一番人気のお米です。

2.『にこまる』お米コンクールを席巻する人気の品種で、「ヒノヒカリ」の普及地域向きの中生種で長崎県で多く生産されています。

3.『イセヒカリ』はコシヒカリの突然変異種で、台風に耐えて伊勢神宮神田に残ったという奇跡のお米です。硬質米なので炊く前に充分水に漬けると甘みを抑えた旨味が際立ちます。

4.江戸〜明治の時代えに圧倒的人気を誇った『ササシグレ』の種もみが入手できたので、10a(1反)から栽培を始めようと思います。『ササシグレ』はコシヒカリ出現まで美味しさが語り継がれ、低アレルギー米の要素を兼ね備えているので貴重です。

5.『古代緑米』はジャポニカ種で観賞用としても人気の穂が紫の緑もち米です。緑米は、緑色の表皮の部分にクロロフィルなどの栄養価と風味が多く含まれています。玄米のまま、白米や分搗き米、など、お好みのお米に1割ほど混ぜて炊きます。 緑米の玄米餅は人気があります。http://seedrice.net/green/

6.赤米が人気です。昨年倒伏が著しかった国分寺赤米に代わって、『ベニロマン』を栽培します。白米に混ぜて炊くと綺麗なお赤飯になります。

7.『オクノムラサキ』は、インドネシアのバリ島の在来種紫黒米で倒伏しにくい品種で、アントシアニンを含むので白米に混ぜて炊飯するとうっすら赤く染まります。

8.『ヒヨクモチ』は、きめが細かく粘りと甘味のある上品な食味が人気の秘密で、引きが強いので、おいしい餅になります。