地域の生きものを活用し、無農薬栽培を目指す稲作技術

http://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_takumi/pdf/hukuoka.pdf

「農業技術の匠 : 環境稲作研究会 」 ( 福岡県前原市 )
~ 地域の生きものを活用し、無農薬栽培を目指す稲作技術 ~

福岡県福岡地域農業改良普及センター
※最寄りの普及指導センター
住所:福岡県福岡市西区飯氏902-1 TEL:092-806-3400

1 技術確立の背景(目的) 1993年に地域で活動している減農薬・有機農業グループ が中心となって、地域の生きものを活用した無農薬の稲作 技術確立と自然環境の復元を視野に入れた「環境稲作研究 会」を発足しました。 研究会は農業技術の自然環境への影響を把握し、地域の 生きものを活用した無農薬栽培を実践し、それを広める活 動を行っています。

2 技術概要(技術効果) 水稲へ被害を及ぼすスクミリンゴガイの習性に着目した 水管理や丈夫な大苗づくりにより、食害を軽減し除草に利 用する技術を確立するとともに、カブトエビ、貝エビ、赤 浮草、アオミドロ等の地域の生きものを活用した除草を行 い、これらの活用面積は450haに及んでいます。 また、虫見板を活用して、それぞれの田んぼで病害虫の 発生予察を行っています。 これらの技術に加え、温湯消毒、薄播き、疎植、土づく り、元肥減肥等の技術を組み合わせて、無農薬栽培技術体 系を確立し 殺虫・殺菌剤は不要 、 。 なレベルに達しています 環境稲作研究会

3 技術の地域への活用状況(普及状況)
スクミリンゴガイは、これまで難防除重要生物と して各地において薬剤防除や耕種的防除等を利用し た駆除が試みられてきましたが、貝の根絶は困難で あり、現在でも各地で被害が報告されています。 本技術は、スクミリンゴガイの水稲苗への食害を 回避するだけでなく、一歩進んで水田内に発生する 雑草の防除に利用しようというものです。 このスクミリンゴガイによる除草とカブトエビに よる除草方法は、福岡県の「雑草防除の手引き」に も掲載され、他地域でも活用されています。 また スクミリンゴガイによ 、 「 る除草を実施した 無 農薬米 は 糸島のブランド米として広く販売され 」 、 JA 高い評価を得ており、地域住民にも 「全国で最も農 、 薬散布の少ない地域」との認識が広まっています。 田植え後の超浅水管理 (研究会による環境調査) ※スクミリンゴガイによる除草は、既にスクミリンゴガイが生息しているほ場で食害回避を兼ねて 利用を行うものであり、未生息のほ場に新たに貝を導入するべきものではありません。

<「農業技術の匠」のポイント>
スクミリンゴガイを利用した除草技術 <水管理による被害回避法>
① 薄播きで、大苗を作り、スクミリンゴガイに食害されにくくする。
② 田面を均一化し、スクミリンゴガイの食害を受けにくくする。
③ 田植え後15 ~20 日間は「ひたひた水(超浅水管理 にする )。 高いところが 水面上に出て 低 い部分は水深3~5cm、均平な田なら0~2 cm になるくらいとする。
④ 除草剤は使わない。
⑤ 土が水面から出た所だけは草が生えてくるが、稲が育つまでがまんする。 (草の成長が早いなら、早めに1~3日の浅水にしてみて、すぐ落水してもいい)

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⑥ 田植え後15~20 日たったら水を溜める。このとき低いところで水深10cm 、高い ところで3cm ぐらい。雑草の生育が早い場 合は、早めに1 ~3cmの浅水にしてすぐ に落水する。
⑦ 苗への食害を防ぐための浅水管理と雑草を捕食させるための深水管理の切り替え時 期はイネの5~6葉期(2頭以上 ㎡で除草効果)

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⑧ ジャンボタニシは一斉に草のある高いところに移動していき、草を食べる。