リンゴガイ農法とは

リンゴガイ農法(Apple snail farming)とは
稲苗が標的となる田植え直後に、水張 りをゼロにしてスクミリンゴガイを眠らせる。その後、1日1mmで水深を上げ、雑草の芽を食べさせる。10日後にいっきに5cmの深さにする。こうすれ ば、株元が固くなった稲よりも、生えてくる雑草を好んで食べてくれるので、除草剤なしで栽培が可能であるという。

1989年に前原市雷山の大平正英さんによって、全国ではじめてジャンボタニシの食草習性を活用した無除草剤農法が試みられた。

農と自然の研究所より
http://hb7.seikyou.ne.jp/home/N-une/
『環境稲作のすすめ』
コメだけが、田んぼの「生産物」ではない

http://hb7.seikyou.ne.jp/home/N-une/2-d-4-kannkyouinaskaunosusume.htm
稲守貝(ジャンボタニシ)稲作
1. 稲守貝の歴史
福岡県では1981年頃から食用としての養殖が始まりました。前原市では83年養殖が開始されています。ところが、放棄された養殖場から逃げ出した貝が、 「害虫」化したのです。稲への被害は前原市では83年から被害が出始め、多くの予算をつけて駆除活動が続きました。多くの百姓が田に入って取って回りまし たが、貝の棄て場所に困るありさまで、死臭が漂い皆が憔悴しきっていました。
そんなとき1989年に前原市雷山の大平正英さんによって、全国ではじめてジャンボタニシの食草習性を活用した無除草剤農法が試みられ、小川武臣さんに引 き継がれ、さらに92年より田中幸成さんら七人によって組織的に研究され、1993年より「稲守貝研究会」(田中幸成会長)が結成され、本格的な普及が始 まりました。稲守貝(いなもりがい)というのは、研究会とJAが公募したジャンボタニシ(正式にはスクミリンゴ貝)の愛称です。この貝を活用し、除草剤を 使用しない米はJAによってグリーンコープ生協に販売されています。
ジャンボタニシの根絶は前原市の失敗でもわかるように、不可能なばかりか、弊害すら出ています。今ジャンボタニシは西日本各地に広がっています。だからこそ活用するこの農法は全国から注目され、視察者が相次いでいるのです。

 2.具体的なやり方
2-1.田植後、15~20日は「ひたひた水(超浅水)」にする。高いところが水面上に出るぐらい。低い部分は3~5㎝。(均平な田は0~2㎝の浅水でいい)
2-2.もちろん除草剤は使わない。除草剤を使うから、水をためなければならず、しかも草が枯れてしまって、餌がないから稲を食べることに気づくべきです。
2-3.田面の高いところだけは、草がはえてくるが、稲が大きくなるまでがまんする。
2-4.田植後15~20日たったら、水をためる。(低いところで10㎝、高いところで3㎝ぐらい)草の成長が早いなら、早めに1~3日浅水にしてみて、すぐ落水してもいい。
2-5.ジャンボタニシは一斉に草のある高いところに移動していき、草を食べる。

3.重要なポイン
3-1.田んぼの中のジャンボタニシで、3㎝以上の貝は秋・冬・春のロータリー耕起で死んでしまうので、心配いりません。
3-2.水路から侵入する3㎝以上の貝は要注意ですが、湛水しなければ大丈夫。
(心配なら網目が2㎝のものを水口につける)
3-3.ジャンボタニシは1~2㎝のものが、1㎡に2個以上おれば除草効果は心配ない
(草が少ない場合は1個/2㎡でもいい)
3-4.ジャンボタニシを利用しようとしまいと、田面を均平にしておくことが一番大切なことです。低い部分だけが食害されるからです。どうしても、低い部分が出て食害が出るようなら、タケノコが好きなので、それで引きつけるのも手でしょう
3-5.苗はできるだけ大きい苗にした方がいいので、1箱100g以下とし、30日苗以上としたほうがいい。そうすれば、最初から水深をもう少し深くしてもいいでしょう。
3-6.ジャンボタニシは自分の殻の高さの水深がないと、活発に動きません。つまり、被害の大きい3㎝以上の貝が動き回るのは、水深が3㎝以上の時です。この貝が水上に出るのは産卵の時だけです。卵は水没すると死ぬからです。
3-7.こうした水管理をすると、土の高い部分の肥切れがやや早くなりがちですが、除草剤によるダメージもないので、稲の生育には支障はありません。
3-8.よく、大雨で冠水するところでは難しいのではないかと質問されますが、そういところこそ、浅水管理のこの方法が有効なのです。現に前原市の新田や泊地区の冠水地帯では被害が劇的に減っています。

 4.今後の課題
4-1.新たに導入すべきか
除草剤を使用しない除草法としては最も安価な方法と言ってもいいでしょう。しかし、ジャンボタニシによる被害に苦しんでいる地域で、活用に踏み切るのは当 然だとしても、現在いない地域でも、他地域から導入してまで放飼することにはもうしばらく慎重にすべきでしょう。なぜならしっかり手入れをしていない水田 では、被害が出る可能性があるからです。
4-2.永続できるか
ジャンボタニシは新しい侵入生物です。この生き物がこの国に定着できるかどうかは、まだ時間がたたないとわかりません。ある程度増殖すればその後はむしろ 幾分減り気味になるようですが、その理由もよくつかめていません。水田内で増殖し、水路に逃げ出すよりも、水路での越冬・増殖が大発生の原因ですが、水路 と水田間の行き来はもう少し確かめる必要があります。
4-3.生態系の改変
ジャンボタニシがいる田はそれこそ稲刈りの時まで、草一本もはえなくなります。これでは他の生き物も生きにくくなります。それは除草剤でもそうではない か、心配することはない、という意見もありますが、除草剤の代替技術ではなく、もっと上質の共生技術をめざしているのですから、安心していてはいけませ ん。ジャンボタニシの登場によってどう生態系が変化しているのか、注意深く観察を続けていくべきでしょう。

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